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10月2日掲載の恵迪寮同窓会主催の文化講演会の内容を追補します

[事務局からのお知らせ]

『内村鑑三・有島武郎と石狩川・千歳アイヌ民族―札幌農学校の歴史を見なおす―』

                       ~井上勝生北大名誉教授講演の概要~

文化講演会は、北大・恵迪寮精神の継承の場として開催しOBや一般市民ら約100名近い参加がありました。

今年は、北海道大学名誉教授 井上勝生氏(元北大大学院文学研究科教授)をお招きし、『内村鑑三・有島武郎と石狩川・千歳アイヌ民族―札幌農学校の歴史を見なおす―』と題するご講演をいただきました。

井上先生は日本近代政治史がご専門の歴史学者で、幕末維新の研究、明治日本と北海道の研究などをされています。

青年期の内村鑑三・有島武郎とアイヌとのかかわりについて新たに発見された資料をもとに北海道の歴史風土とともに学びました。

内村鑑三は思想家、無教会主義などとして知られていますが、札幌農学校を農学士(水産専攻)として卒業後、開拓史・札幌県では漁業調査・水産学の研究を行い、鮭漁なくばアイヌは飢餓に陥ることを確認し、千歳川・石狩川サケ漁実況調査復命書(新発見史料)、千歳川鮭漁開業の義などにより、鮭の保護とアイヌによる鮭漁の継続などについて提案し却下されています。

他方、アイヌ共有財産の道庁管理をめぐる紛争、北海道旧土人保護法の歴史的役割などアイヌと札幌農学校(第3代札幌農学校橋口文蔵校長や卒業生の一部)とのかかわりについて批判的に評価し、さらに有島武郎は卒業旅行でアイヌに接していたにもかかわらずなぜその文学で多くを語らなかったなど興味深い解釈も語られました。

内村鑑三の青年期の行動・思想がうかがえる資料に接し、離札・渡米後の内村の展開をより理解する契機になり、また、アイヌとのかかわりのみならずより深く北大精神・行動を考えるにあたって札幌農学校の歴史を見なおす良いテーマでした。

先生のご講演・研究は多くの文献資料を渉猟し実証的に進められ、歴史研究と評価の際の基本的姿勢を確認させらるとともに、アイヌにかかわる取組の成果は、内村の「代表的日本人」における「使命はときに未知なる他者によって引き継がれる」を思い起こさせます。

講演会レジュメ

講演会の配布資料

以上