日付アーカイブ: 2025年11月26日
2025年9月27日開催『北大学寮(恵迪寮)150周年カウントダウンイベント 誇り高き自治寮よ 永遠に! ー恵迪寮改修問題を考えるⅡー』北海道大学ホームカミングデー2025 開催報告 シンポジウムと寮歌のつどい
[事務局からのお知らせ]
✦シンポジウム 恵迪寮改修問題を考えるⅡ 「誇り高き自治寮よ永遠に!-過去から未来へ自治寮をつなぐ-」
昨年に引き続き恵迪寮改修問題を考えるシンポジウムを学術交流会館小講堂で13時半から開催しました。札幌農学校の寄宿舎から3代目となる築42年の現恵迪寮は老朽化が進み大規模な改修が求められています。このことは、建物の改修と延命ということだけではなく、そこにおける寮生の自治的な生活や文化の継承という課題も含んでいます。そこで今年は3本の基調報告を下に多様な観点から問題を考えました。同窓会会員、現寮生、Zoom含め61名が参加しました。

基調報告は次の通りです。
基調報告1 開拓の村旧寮舎の展示リニューアル~札幌農学校以来150年継承する自治寮
恵迪寮同窓会理事・常任幹事 吉成久和君
基調報告2 令和の寮生が繋ぐ自治 ~恵迪寮100年の営みから学び100年後へつなぐ形~
恵迪寮第325期執行委員長 福島雄大君
基調報告3恵迪寮改修にかかわる三者懇談会の実情報告
恵迪寮同窓会理事・常任幹事 都野建二郎君
基調報告1として、吉成君からは、北海道開拓の村の旧恵迪寮の一部を利用した同窓会による展示リニューアルについて報告が行われました。この展示は、1983年に旧恵迪寮が現在の寮に建て替えられるときに、恵迪寮同窓会関係者の尽力によって旧寮の一部が開拓の村に移設され、同窓会がその一部を利用して行っていた展示の再構成、再編集の取り組みと言えます。幾度もの議論を重ね、展示のコンセプトを「過去から未来へ自治寮をつなぐ」としたこと、また展示のメインターゲットを大学進学、ひいては北大、恵迪寮への入寮も考えられる中高生などの若い層としたこと、そのため、年齢の近い現役寮生にも企画に参加してもらい、彼らのアイディアを多く取り入れ、イラストの協力も得たことが報告されました。札幌農学校から連綿と続く寮自治や寮歌などの多様な寮文化が若い感性に訴えるように生き生きと表現されていることが紹介されました。
報告事項2として、現寮長福島君からは開拓の村の展示企画委員会への参加を通じて、昭和、平成、令和へと時代が移り行く中で幾度もの危機を乗り越えて現在の恵迪寮があるという歴史的な重みを知りえたこと、また、開拓の村展示リニューアルセレモニーで北大副学長等大学関係者、同窓会員、現役寮生が寮歌「都ぞ弥生」を斉唱した際には、立場と世代を超えた一体感がそこに生まれたことを語りました。続けて、自らの恵迪寮体験から効率や生産性が問われる受験勉強とは真逆の「学び」への気づきと、「気がつけば沼っていた」という刺激に満ちた寮生活が語られました。その後、恵迪寮大規模改修の話し合いの歴史的な経過と副学長から求められている質問への回答とも言える、「大規模改修後の恵迪寮の理想像」について寮自治会の検討結果が報告されました。その内容は、恵迪寮生が考える、恵迪寮の理念と意義(「北大生の就学を経済的に支援する厚生施設であることを基盤に、寮生の自治によって営まれる、主体性と豊かな人間性が涵養されるような共同生活の場」)、寮生の経済負担、寮生が求める設備、入寮の資格・定員等々に関する極めて具体性の高いものでした。以上を10月以降の三者懇談会の議論の題材として提出し臨むことが報告されました。最後に福島君は、昭和52年度寮歌「新たな燈火」を紹介し、今後とも現寮生と同窓会が協力して大規模改修を乗り越え、新たな燈火を点しましょうと語り、報告を締めくくりました。
報告事項3として、都野君からは、三者懇談会の現状及び国内大学事情並びに学生気質に関する私見などが報告されました。都野君はコロナショック時の寮生支援にかかわって大学と同窓会が協力したことから定期的な三者懇談会が生まれ現在まで継続して来ていること、北大においては学生宿舎検討委員会が立ち上がり「リビング&ラーニング」という考え方で寮のあり方について2025年度末までに結論を出す作業が進められていること、また、施設の老朽化と修繕が進まないのは北大のみならず全国の国立大学法人に共通している財政的な問題が背景にはあるが、その一方東大や九大、東北大では新寮が建設されていることを、資料を下に報告しました。また、こうした事情と同時に、大学進学に当たっての経済、地域格差も拡がり、学生気質も変わって来ていることを紹介しました。ベストセラーになった『先生、どうか皆の前でほめないで下さい』で示されているような“目立つことを恐れるような学生気質”と、主体性や自主性を備え少々の困難では折れない“社会的な耐性を身に着けた恵迪寮生”はどこに違いがあるのか。実は同じ学生なのだが、恵迪寮という教育環境が恵迪寮生を創っているのではないか、言い換えれば150年も「リビング&ラーニング」を続けて来た恵迪寮の「教育力」と言うことができると考えるが、これを北大はどう評価するのだろうか、と問いかけて都野君は報告を終えました。
以上3本の基調報告を終え残された時間で質疑応答を行いました。今後100年を展望するならば留学生との混住についてどう考えるのか、今後の改修規模をどう考えるか等について質問がだされ熱心な議論が行われました。
最後に恵迪寮同窓会を代表して藤田正一副理事長から、「明治から令和まで燈火のように引き継がれた恵迪寮の自治を守り育てることが、創基150周年の北大にとって唯一無二の『教育』として誇れることになるのではないか。その為にこそ同窓会は、北大による恵迪寮改修早期実現を更に強力に支援して行く」との取りまとめが行われました。
(文責:恵迪寮同窓会事務局長 甲斐 陽輔)
✦「寮歌の集い」
「シンポジウム」に引き続き、従来のクラーク会館ではない会場となった「百年記念会館 大会議室」で、北海道大学から2名、道外から駆けつけてこられた3名、小樽商科大学関係者6名、現役寮生15名を含めた多彩な参加者55名を得て、「寮歌の集い」を行いました。
開会は午後4時。北海道恵迪寮同窓会の内藤春彦会長の開会挨拶、お忙しい中駆けつけてくださった髙橋彩北海道大学理事・副学長の来賓挨拶、参加者全員での「都ぞ弥生」1・2番の斉唱と開会のプログラムは進行しました。ここで、今回の参加者の中から北大女子寮出身でご主人が恵迪寮同窓会設立にも尽力された故岡部賢二君(155期寮長)のご令室である岡部潔子様(S33北大入学)からの特別スピーチがありました。そして、東日本恵迪寮同窓会の坂倉雅夫会長による乾杯で寮歌祭はにぎやかに始まりました。
第一部は「エルムの鐘を歌った寮歌」と題して、数ある恵迪寮寮歌の中から9曲を選んでプログラムを構成しました。進行は、この企画の発案者である千川浩治君(S40 )が務めました。かつてはエルムの鐘を実際に聞いていた寮生は寮歌の中に歌いこんだのですが、昭和47年を最後に寮歌の中には登場しなくなったことが紹介されました。また、今回参加の最年長である高井宗宏君(S31)からもエルムの鐘に関する貴重なお話がありました。これらことについては、日を改めて寮歌の歴史とともに書き留めておく必要を感じました。
歌った寮歌は、「蒼穹高く」(T5南寮)、「茫々はるか」(T13)、「爪紅の黎明の風」(T15開学50周年記念)、「蒼空高く翔けらむと」(S2)、「タンネの氷柱」(S8)、「時潮の流転」(S14)、「饗宴の杯に」(S23)、「春静寂なる」(S23逍遥歌)、「楡陵に月は」(S47)です。若い会員や現役寮生の発声で歌い始め、全員で声高らかに歌いました。中には、普段あまり歌わない曲もあり、モゴモゴとなる場面もありましたが、これも寮歌享受の一端であり、一興かと思いました。
第二部は「友情参加・最新寮歌・応援吹奏団演奏」です。小樽商科大学の友情参加では、商大OBと現役応援団員に北大応援団OBも加わって、校歌「金鱗をどる」と「若人逍遥の歌」を歌いました。小樽商大応援団後援会の小西一郎氏のスピーチは格調高く、北大と商大の友情を改めて感じました。次に、現役寮生が最新寮歌「浪の旅路の」(R6)を披露しました。この曲の作歌者である島圭次郎君が出席しており、作歌にまつわるエピソードや思いを力強く語りました。令和になっても寮歌を作り続けている恵迪寮を改めて誇りに思ったのは私ばかりではないでしょう。次に、応援吹奏団の演奏です。他の行事との関係から当日は3名だけの参加でしたが、いつも野球の応援等で演奏している寮歌を力強く演奏し、会場の一体感を醸し出してくれました。
第三部は代表寮歌や新しい寮歌の大合唱です。昔から歌われている名曲と比較的新しい曲を織り交ぜての選曲でした。昭和30年代入寮の大先輩と令和7年入寮の若者が一体となって、寮歌の数々を歌いあげました。現役恵迪寮生の若々しい歌声に、多くの同窓生は元気をもらうとともに、寮歌が今もなお生きていることを実感しました。しかも、現役寮生は私たちより少なくとも50曲以上多くの寮歌に接しているのですが、彼らはそれを苦も無く取り入れ、実に多くの寮歌を自分のものとしていることがよくわかりました。このことは、とても誇らしく頼もしいことであり、参加のOBが皆感じたのではないでしょうか。
なお、現役寮生が選んだ曲に「恵迪節」(S53)がありました。この曲の作歌作曲者である現(一社)恵迪寮同窓会事務局長の甲斐陽輔君から、この曲が作られた時も現在と同じく恵迪寮の老朽化に伴う建て替え問題があり、大学との協議が難航していたことなどが語られました。
歌った寮歌は次のとおりです。
「水産放浪歌」、「藻岩の緑」(M44)、「雪の白さに」(S59)、「花繚乱の」(S32)、
「楡は枯れず」(S55)、「春未だ浅き」(S121第30回記念祭歌)、「恵迪節」(S53)、
「噫妖雲は」(S10)
そして、最後は(一社)恵迪寮同窓会の藤田正一副理事長の発声で、明治45年「都ぞ弥生」1~5番を皆で肩を組んで声高らかに歌って締めました。なお、来賓の髙橋理事・副学長が学生と肩を組んで歌っておられた姿はとても印象的でした。最後までありがとうございました。北海道恵迪寮同窓会の千川浩治副会長の閉会挨拶が終わったのは、午後6時15分でした。
(文責:北海道恵迪寮同窓会副幹事長 千原 治)


