1. クラーク博士肖像画の制作

 1876年8月14日に札幌農学校開校式を主導したクラーク博士は、わずか8ヶ月の札幌滞在ながら、札幌農学校の基礎を築いた功績によって学内外に燦然と輝いている。さらなる飛躍を目指した農学校は、1898(明治31)年に学芸会編「札幌農学校」を刊行し、クラーク先生を核とする高邁な開校思想や教育体制、広大な北海道の自然のすばらしさ、その農業開拓と工業発展、それに応じた農学校施設等の充実振りを紹介したところ、全国の高校生に強い憧れを抱かせ、府県からの進学生が過半数を占める全国区の農学校になった。また前掲の本は、ベストセラーになったため、1899年5月に「札幌農学校」再版、1902年に改訂増補第3版も発行する事態になった。

 この出版によって予想外の利益がでたため、本ページの主題「クラーク博士肖像画」は、1899(明治32)年に『吾が先師クラーク氏は、農学校創立の功多きを以って、氏の肖像を本校演武場に掲げ、永く記念に供せんがため、札幌農学校出版残務委員会は、剰余の金をもって本校画学講師飯田雄太郎(飯田の経歴)氏に嘱して描かしめ、過る7月の卒業式にこれを掲ぐるに至りたり』(学芸会雑誌31号雑報1899より)と記す通り、フランス直輸入の高級キャンバスに木額を使って学内で最初となるクラーク肖像画を制作させ、学生組織の学芸会から農学校に寄贈して、写真2のように演武場(現在の時計台)正面右にクラーク博士像、左に黒田清隆長官の肖像画を掲げ、同年7月の卒業式を祝ったばかりか、翌々1901年に写真1のように演武場を札幌初のイルミネーションで装飾して「札幌農学校創立25周年記念事業」を盛大に祝った。1900年代に入ると北海道開拓の進展、工業化の発展、そして人口の増加により、札幌農学校の帝国大学昇格論も新聞を賑わすようになった。

写真1.1901年演武場のイルミネーション
写真1.1901年演武場のイルミネーション
創立25周年事業(「写真集北大百年」49頁)
写真2.クラーク像と黒田長官像を掲示
写真2.クラーク像と黒田長官像を掲示
(この写真は窓のハレーションを防いで肖像画が見易いように画像処理している)
(「写真集北大百年」49頁)

目次
1.クラーク博士肖像画の制作
2.クラーク博士肖像画の恵迪寮移管
3.クラーク博士肖像画の継承