佐藤総長の「亭ゝ喬樹」

佐藤昌介初代総長揮毫の掛軸「亭ゝ喬樹」

寄託経過

 本掛軸は、鈴木信夫氏(昭和17年入寮)が恵迪寮同窓会に寄託され、同窓会事務局が文化財として管理している。

揮毫経過

 本軸は、琢堂こと北大初代総長男爵佐藤昌介先生の書であり、大正11年(壬戌)7月に摂政宮殿下(昭和天皇)が北大に行啓された際の感懐を七言絶句で表明している。

 摂政宮殿下(昭和天皇)の来道日程は、大正11年7月8日にお召艦日向で函館港着、函館・小樽巡幸後、11日夕刻に札幌着(豊平館宿泊)。同12日入江侍従長・珍田東宮太夫が陪乗し、北海道庁訪問(宮尾道庁長官)、単独拝謁者43名(北大から佐藤・宮部・南・橋本・新島・松村・高岡・八田・時任・星野・半沢・青葉・明峰・森本・佐々・東海林・三田村・レーン・コーラ)、列立拝謁者302名。同所のご真影奉安所前で記念植樹、その後、札幌神社、札幌控訴院、札幌師範学校、昼食(豊平館)。午後北大へ、正門から古川講堂にかけて道路両側に学生千人、古川講堂前に全教職員が整列して奉迎した。中央講堂御座所で総長から説明を行った後、水産講堂・農学講堂の標本等を視察されて終了。次いで農事試験場・植物園の視察後に豊平館泊まり。翌13日は、中島公園、山鼻小公園・商品陳列所、真駒内種畜場、歩兵25連隊、月寒種羊場のご巡幸。同14日には帝国製麻会社、日本麦酒会社に行幸され、正午に札幌駅発お召列車で旭川へ。

文意

 原文は、『亭ゝ喬樹送涼風/緩ゝ清流繞津宮/師弟三千迎駕處/祥雲一帯靆蒼空/ 壬戌初夏恭迎/ 鶴駕琢堂農人(落款朱印)』と書かれ、『亭ゝていていトシタ喬樹きょうじゅ涼風ヲ送ル/ 緩ゝだんだんナル清流津宮しんぐうめぐル/師弟三千駕處がしょニ迎エル/ 祥雲しょううんガ一帯蒼空ニ靆ル』と書き下される。大意は『直立した高い木に涼風が流れる/緩やかな清流が津図浦々を流れる/北大人三千名が行啓をお迎えしている/蒼空を瑞雲が続々と湧き出て覆っている/ 大正11年(壬戌)初夏/ 摂政宮殿下の行啓を謹んで迎える(恭迎鶴駕)/琢堂農人(北大総長男爵佐藤昌介)』と解される。

 北大構内、クラーク先生銅像前にある「聖跡」は、この行幸を記念して設置されたものである。

揮毫者紹介

 別ページの書額「恵迪吉」、扁額「手稲山頭」の揮毫者紹介欄を参照して下さい。