寄宿舎

 大學のメインビルディングからもエルムの樹林を隔てゝ、1丁許東北に寄宿舎恵迪寮がある。東西に長く並んだ2棟。一つを南寮と云ひ他を北寮と云って居る。1寮の長さ約そ60間幅4間半。階上階下2寮の寮數が36。1室の廣さ間口3間半奥行3間である。廊下で南北寮を2箇所に接く西の廊下は間の學生監部に廣がて居る。監部に續く小使室と反對に、玄關が付いてゐる。兩側に各室宛の下駄箱が並ぶ。玄關を出ると前は學校の運動場で、廣い牧草地である。遥かに手稻連山は、四季折々の色を以て、我等に對して居る。東側の廊下は中央から食堂が膨れ、百數十人の食卓が置かれてある。炊事場は尚其の先に完備されて居る。此の廊下が此寮に盡きた處を右折すれば洗面所で、多くの管が並んで、夏は水、冬は湯が出るやうになつて居る。此處に續いた湯殿は頗る大きい。湯槽には一度に15人を入れ、床には尚ほ多くが身體を洗ふことが出來る。湯は毎週日水金に4時から7時迄沸されるのだ。南寮の東側に高い煙突を立てた煖房がある。11月の半ば過ぎから蒸氣は此處から送られて、各室のラジエーターに快い響を与へるのである。室に還って中を改める。疊一枚大の寢台は、高さ、2尺5寸抽出と押入れとがついて、室毎に4つある。其の寢台の中に、各自の衣類其の他の所持品をしまって置くのだ。机が4台、椅子が4脚、机と同長の本立が附屬して、夫れゝゝ寢臺に添ふのである。玄關にある外此處にも一つの下駄箱の備へがある。其の他帽子掛、バケツ、箒木からハタキに至るまで一通りは備へ付けられてある。36の室の内、南寮の西端の階下は炊務委員室である。北寮の西端は、上が閲覧室、下が集曾室と定まってゐるから、残り32室に128の定員である。南寮は南の眺めを、北寮は北の見晴しを占有して、各獨特の誇りを示してゐるのである。